人のせい?

「中学時代に戻りたいなあ」。当時から知っている高校生が言うので、私は聞き返しました。
「中学の時、楽しかったの?」
「そんなわけないじゃん」
「じゃ、どうして?」
「中学校の時は、全部人のせいにできたから、ラクだったわけ。親のせいでこうなったって。ほんとうは、自分自身の問題だってわかってたんだけど」
 高校生になって、自分のことは自分自身で何とかするしかない、という思いが強くなってきたのでしょう。そして、人のせいにしてきた今までの自分に気づいたわけです。

 みなさんも、できないことを人のせいにしていることはありませんか。
 互いに相手のせいにしあって、ケンカになることもあるかもしれません。「親がうるさく言うから、やる気がなくなった」などと子どもは親のせいにします。子どもは大人から大きな影響を受けますから、子どもが大人のせいにしたくなるのは自然なことかもしれません。でも、親に言われる前からやる気はあまりなかったのが真相でしょう。親としては、うるさく言い過ぎたかなと内心思いつつも、つい「私がうるさいのは、あなたのせいでしょ」などと言いたくなります。子どもが親の思い通りにならないことでイライラしたのであれば、その感情は親自身の問題です。本当は、子どもも親も、相手のせいだけではないことには気づいているのです。
 うまくやれない原因があいまいなのも、自分だけに問題があると考えるのも、いい気分でありません。そこで、つい人のせいにしたくなるのです。でも、人のせいですませていると、どうすればよいのかも見えにくくなってしまいます。

 みなさんは、大人に言われるからやっているということも多いかもしれません。やらされているという気持ちが強い時ほど、うまくいかないときに人のせいにしたくなるものです。自分が選んだことであれば、結果を自分で引き受けることができます。自分のことは自分で決めているという感覚を持てているときには、うまくいかなくても人のせいとは思わないのです。
 うまくやれないことを人に言い訳する必要はありません。自分自身の人生なのですから、自分が納得できることこそ大切です。人のせいにせず、今の自分にできることを自分なりにやっていきましょう。

  2011.8.21 中日新聞「親子でホームルーム」『人のせいにしないで』に一部加筆。

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